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自分を愛することの力――渡辺直美から影響を受けた植草歩、モデルと指導者として新たな舞台へ

空手界の頂点に立ち続けた植草歩――彼女は12年間にわたる空手のキャリアを持ち、2024年に9月に引退を発表した。しかし、彼女の挑戦は終わらない。引退後は指導者と新たにモデルとしての道を歩み始め、これまで培ってきた強さと自己表現を融合させながら、未知の世界へと踏み出している。自分らしさを追求し続ける彼女の姿を、植草さん自身の言葉で紐解く――。

Biểu tượngIppei Ippei | 2024/11/20

ミラ・ジョヴォヴィッチへの憧れ―強い女性像の原点

植草さんに影響を与えた作品についてラフに尋ねると、映画『バイオハザード』のヒロイン、ミラ・ジョヴォヴィッチへの憧れを挙げた。ミラの持つ圧倒的な強さとカリスマ性に惹かれ、自分も同じように「強い女性になりたい」と願うようになったという。

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撮影/長田慶

「彼女の姿を見て、こんなに強い女性がいるんだと感動しました。私もあんな風に、強くてかっこいい女性になりたいと思いました。」

映画の中でミラは、どんな困難にも果敢に立ち向かい、自分の信念を貫いていく。その姿に触発された植草さんも、空手を通して自らの強さを磨き、己の道を歩んできた。

心を落ち着ける音楽―「紡ぐ」と向き合う時間

続いて、好きな音楽について尋ねると、植草さんは少し照れながら「アスリートらしい性格かもしれませんね」と笑い、歌手・とたさんの「紡ぐ」という曲についてのエピソードを教えてくれた。

「『紡ぐ』を16時間も繰り返し聴いたことがあります。同じ曲なのに、まったく飽きることがなく、聴けば聴くほど心が落ち着いていくんです。」

彼女は、好きなものにはとことん集中できる性格で、それが心を落ち着けるための方法でもあった。そうした習慣を通して、植草さんは試合や勝負の舞台に向けて心身を整えてきた。


吉田沙保里とヘレン・マルーリス―アスリートとしての影響

さらに、植草さんがアスリートとして影響を受けた人物の一人が、レスリング界のレジェンド・吉田沙保里さんだった。吉田さんの絶え間ない勝利への挑戦と、努力し続ける姿勢が、植草さんにとって強さの基盤を築く大きな支えとなった。

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撮影/長田慶

「吉田沙保里さんのように、常に勝ち続ける姿に憧れました。勝負の世界であれだけ長く勝ち続けることがどれほど難しいか知っているからこそ、彼女の強さが本当にすごいと感じます。」

また、リオオリンピックで吉田さんを破ったヘレン・マルーリス選手にも、植草さんは深い感銘を受けている。特に、ヘレン選手が日本文化に触れながら、相手へのリスペクトを大切にしつつも強さを追求する姿勢に共感を覚えたという。

「ヘレン選手が勝利後も吉田さんへのリスペクトを忘れず、勝利だけが全てではないと示してくれました。私も、彼女のように強さと謙虚さを持ち続けたいと思います。」

引退後の挑戦―モデルとしての道へ

もともと植草さんはおしゃれが大好きだった。だが、子どもの頃はまだおしゃれに興味を持っておらず、そのきっかけは高校1年生の時に出会った中学時代の彼氏だった。

高校生活は忙しく、私服で会えるのはせいぜい半年に一度くらい。いつもはジャージ姿の植草さんも、その日だけは特別におしゃれをして彼の前に現れた。髪を整え、少し背伸びをしたその日、彼は笑顔で「すごく可愛いね」と言ってくれた。その一言が、彼女にとって大きな自信となった。

「すごく嬉しかったんです。それから、おしゃれがどんどん好きになっていきました。」

普段はジャージ姿でも、休日にはネイルをし、髪をセットして少し違う自分に変身する。それだけで心が軽くなるのを感じていた。オリンピック選手として体が大きくても、私服を楽しむ時間は特別なひと時だった。

しかし、オリンピックが終わり、競技から離れて食べることの楽しさを知ると、次第に体重が増え、以前の服が窮屈に感じるようになった。体型を気にするようになり、おしゃれをすることに自信を失い始めた。

そんな時、植草さんはラファーファのモデルたちの存在を知り、その話に新たな可能性を感じた。

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撮影/長田慶

「体が大きくてもおしゃれはできるって、証明したかったんです。競技をやめた人や、出産後に体型が変わった人もたくさんいます。そんな中で、スポーツ選手がモデルになるのは新しい挑戦だと思いました。」

植草さんは意を決して応募し、書類審査に通過。そして、面接でも堂々と自分の経験を語り、無事に合格。モデルとして新たなステージに進むことになった。

「もっと自分の経験を伝えたいし、空手を広めたいという思いがありました。次は別のステージで空手を伝えていきたいと思っています。」

渡辺直美から学んだポジティブさ―自分を肯定する力

植草さんがモデルの道を歩む中で、特に心に響いたのは、タレントの渡辺直美さんの存在だった。自分の体型や外見を誇りに思い、ポジティブに生きる姿を発信し続けている。

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撮影/長田慶

「渡辺直美さんが自分を堂々と表現している姿に感動しました。彼女は、自分を心から愛している。それを見て、私も自分をもっと大切にしようと思いました。」

植草さんは、空手選手として競技に最適化された体を維持してきたが、引退後は体型が変わり、自分をどう受け入れるかに戸惑いを感じていた。そんな時、渡辺さんの姿勢が彼女に「自分を愛すること」の大切さを教えてくれた。

「私も、どんな姿でも自分を大切にし、堂々と生きることが大切だと気づきました。周りの目を気にせず、自分の道を歩む姿勢が素晴らしいと思います。

ポジティブなエネルギーは周りの人を幸せにする力があると思います。私も、自分のスタイルを貫き、周りに良い影響を与えたいです。」

空手で得た強さをモデルで表現する、植草歩の新たな挑戦!

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撮影/長田慶

12年間にわたり空手界の頂点に立ち続けた植草さん。引退後も彼女は、新たな舞台で自分を表現し続けていくと意気込む。

「これからも自分らしさを大切にしながら、いろいろなことに挑戦し、空手をもっと多くの人に知ってもらえるよう発信していきたいです。」

植草さんの新たな挑戦は、まだ始まったばかりだ。競技者として培ってきた「強さ」と、モデルや指導者としての「優しさ」を掛け合わせ、これからも彼女は自分自身の道を切り拓いていく。その物語は、今後さらに多くの人に勇気と希望を与えるだろう。


植草歩(うえくさ・あゆみ)
1992年7月25日生まれ、千葉県出身。
8歳から空手を始め、高校3年で千葉国体で優勝し、帝京大学に進学後、大学1年で日本代表入りを果たす。2012年東アジア選手権優勝、2014年世界学生大会優勝など国内外で輝かしい実績を重ねた。2015年から全日本空手選手権で4連覇を達成し、「空手界のきゃりーぱみゅぱみゅ」と称されるように。東京五輪にも出場し、2023年の世界選手権を最後に空手道に区切りをつけ、2024年9月に引退した。168cmの長身を活かし、現在はla farfa専属モデルとして活動中。

Hair&make:Yuzuka Murasawa(PUENTE Inc.)
Photo:Kei Osada