川崎フロンターレが「かわさき水まつり」を開催 天野春果氏がドラマ「サ道2021」とのコラボイベントに込めた想い
J1リーグの川崎フロンターレは、本拠地の等々力陸上競技場で行われたヴィッセル神戸戦(第28節・9月29日)の試合前に、川崎市水道100周年記念イベント「かわさき水まつり」を開催した。川崎市水道局に加えて森と湖の国フィンランド、そして今年7~9月に放送され人気を博したドラマ「サ道2021」とのコラボレーションも実現。数々のゲストも登壇したこのイベントには、平日の日中ながら、フロンターレのサポーターのみならず、多くのサウナーがスタジアムに詰めかけた。今回はかわさき水まつりイベントの企画立案者である株式会社川崎フロンターレの天野春果氏に、今回のイベント企画に至った経緯や想いをお伺いした。
Thiên nga Junichi
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2021/11/10
川崎市水道局に加えて、ドラマ「サ道2021」や、森と湖の国フィンランドとのコラボレーションも実現し、平日にも関わらず多くの人たちでにぎわいを見せるスタジアム前イベントスペース。
――「コロナ禍」やACL開催の影響に伴い、度重なる日程変更を経てのイベント開催になりましたが…?
天野:大きなイベントだったので、出演をお願いしたゲストの皆さんとのスケジュール調整は大変でした。登壇している方々がいらしてこそ、イベントが成り立っている部分もあるので。
残念ながらドラマ「サ道2021」でナカタアツロウ役を演じられていた原田泰造さんはイベント開催日変更に伴いご参加いただけなくなってしまいましたが、偶然さん役の三宅弘城さんが偶然偶然スケジュールが空いていたため来ていただけることになりました。
急なスケジュール変更にもサ道スタッフ皆さんはじめ水まつり参加団体の皆さんが柔軟に変更してくださり、本当にありがたかったです。
――今回のイベントを開催された経緯を教えてください。
天野:地元の川崎浴場組合さんと、10年以上一緒にやらせていただいている「いっしょにおフロんた〜れ」の活動がベースにあります。
川崎市内にある銭湯の利用を促進するため、毎年イベントをうっているのですが風呂に入る」という切り口以外で銭湯利用促進が図れないかと考えていた時、加盟している全35店舗のうち、32店舗にはサウナが併設されていることに気が付きました。
これは「銭湯サウナ」という新切り口で皆さんに銭湯へ行くきっかけが作れるのではと思いました。ただ、それだけの切り口だと僕が大切にしている「話題性」に乏しいため、僕も大好きなドラマ「サ道2021」の寺原プロデューサーを人を介して紹介いただき、コラボができないかと企画提案させてもらいました。
それが「フサ道ランド」です。「サ」というカタカナの文字の中にフロンターレの「フ」が隠れていることに気が付いたのでイベント名は「フサ道」ですが、ロゴだけを見るとは「サ道」と読める工夫をしました。そしてそのロゴをサ道の作者であるタナカカツキ先生にデザインしてもらうという。(笑)
サ道とのコラボは当日イベントだけではなく、川崎市内の銭湯35か所を巡る「フサ道銭湯サウナスタンプラリー」にも展開し、非常に多くの皆さんに参加してもらうことができました。
「サ」の中にフロンターレの「フ」をあしらった「フサ道」のロゴ。
「サ道」作者のタナカカツキ先生にはクラブマスコットのふろん太くんイラストも描いてもらった。
川崎浴場組合加盟全35店舗をまわる「フサ道銭湯スタンプラリー」。全湯制覇者に抽選で「非売品フサ道サウナハット」を進呈。
ー ー近年の「サウナブーム」を天野さんはどのように捉えていますか?
天野:元々、僕はお風呂に入ることもサウナに入ることも大好きなので、「ブーム」というよりも、「ようやく皆が気づいたんだ」という印象で…。「とうとう見つかってしまった」という感じですよね。サウナに入れば、心身がリラックス出来ますし、嫌なことも忘れられる。最近はサウナや銭湯にも若い人が増えていますし、良い傾向だなと思います。
-今回の「かわさき水まつり」の会場内には、テントサウナやサウナカーも展示されていますね?
天野:銭湯などの常設だけでなく、河原や湖のほとりなど様々な場所で楽しむことができるということを見てもらえたらなと。本当は実際に火を焚いて皆さんにも体感していただきたかったんですが、公園内で実施するとなると色々な申請をパスしないといけなく…。今回は展示だけでしたが、次回以降に期待していただけたらと思います。
――企画力に定評のある川崎フロンターレさんですが、今回のイベントはいつ頃から準備を始められたのでしょうか?
天野:僕の頭の中には2年前くらいから企画案がありましたが、実際に動き出したのは、1年前くらいですね。ただ「銭湯利用促進」だけの企画にしてしまうと、小さなお子さんはなかなか楽しめないので、フィンランド大使館商務部の皆さんやムーミンバレーパーク(埼玉県飯能市)にお声がけをさせていただき、幅広い世代の皆さんに喜んでいただけるようなイベント作りを心がけました。
「かわさきフィンランド発見」では、フィンランド大使館職員の皆さんと、インカ=リーサ・ハカラさん、アンティ・クンナスさん等がフィンランドの魅力や、本場のサウナの楽しみ方を語った。
ムーミンのセットアップパネルと記念撮影ができるコーナーも設置。
――これまでにも、優勝時にスワロフスキーの風呂桶(2018年)を制作されるなど、さまざまな企画でサポーターを驚かせてきましたね…?
天野: フロンターレはどんな場面でもファンサポーターの驚きや笑顔を生み出したく、事例のないようなことにチャレンジすることを信条としています。それらフロンターレの仕掛けを度々体感しているサポーターは「次にどんなことを仕掛けてくるんだろう」と、僕らの企画に期待とインパクトを求めている方も多くいらっしゃるので、「当たり障りないもの」になりすぎないように気をつけています。
フロンターレのサッカーってめちゃくちゃ面白いしワクワクするじゃないですか。ピッチで戦っているフロンターレ選手たちと同様に、僕ら事業部も「突き抜けられる」何かをみせたいという気持ちで活動しています。その方が話題性もありますからね。当たり障りのないことをやっても、当たり障りのない結果しか出ないので、これからも他では考えつかないようなイベントを仕掛けていきたいですね。
――純烈の酒井一圭さんとアルコ&ピースの酒井健太さんによる「W酒井トークショー」や、ドラマ「サ道2021」とのコラボレーションなど、さまざまな方々がご出演されていますね?
天野:Jリーグはホームタウン制度がありますが、「風呂」「銭湯」「サウナ」「温浴施設」という切り口なら、さまざまな人々や企業を巻き込むことができる。
実はこのイベントを、川崎フロンターレとしては最も大切な26周年を迎える来年に向けて、さらに発展させていきたいと思っているんです。来年の為の今年なんですね。これまでに出会っていなかった方々を巻き込んで、これからもさまざまな関係性を築いていきたいですね。
「コロナ禍」の影響で、残念ながらスタジアムに入場していただける方は限られてしまっています。ということは今まで「フロンターレのある生活」が日常だった人たちが「フロンターレのない生活」が日常になっているということ。
僕はここに非常に強い危機感を持っています。コロナが明けた後、入場制限がなくなった後、スタジアムに足を運ばなくなってしまった人たちがまた前のように来るとは限らない。一度変わった生活習慣をまた取り戻すのは簡単じゃないと思うんです。
コロナ禍なのでイベントが実施されなくても誰からも文句は言われませんが、コロナ禍の今だからこそ先の未来を考え、「試合は見れないけど、フロンターレのイベントに参加する為スタジアムへいきたい」とチケットを持っていない方にもこれまでと同じように競技場に足を運んでもらうことが大切だと思っています。
新型コロナウイルスとは長い付き合いになると思いますが、その状況でも変わらずに楽しめるフロンターレらしい企画を仕掛けていくので、これからも期待してほしいです。
イベントには、各地で人気を博している温浴施設のご飯(サ飯)も登場。
等々力陸上競技場には、川崎上下水道局とのコラボレーションが実現。川崎フロンターレのマスコット、ふろん太とカブレラのイラストが描かれたマンホールが設置された。
ドラマ「サ道2021」偶然さん役の俳優・三宅弘城さんが始球式を担当。
「彼が先発出場すればこの画をおさめることができて話題になると思っていたので、予想通りの画が撮れてガッツポーズした(笑)」と天野さんが語った偶然さんから風呂桶とヴィヒタを受け取るイニエスタ。
写真提供:川崎フロンターレ