
開幕3連戦で見えたセ・リーグ6球団の期待と不安(後編)
メジャーリーグに続いて日本プロ野球も開幕。セ・リーグでは連覇を狙う読売ジャイアンツを筆頭に、阪神タイガースや横浜DeNAベイスターズの評価が高いが、予想通りにいかないところもペナントレースの醍醐味だ。そんななか、シーズン序盤の流れを作る開幕3連戦が終了。ここまでの戦いぶりとともに、各チームのポジティブな点や不安要素について語っていく。後編では阪神タイガース、中日ドラゴンズ、広島東洋カープの3チームについてお届けする。※トップ画像出典/photoAC

開幕勝ち越しをしたタイガースは上昇気流には乗れず
2年ぶりの優勝を目指す阪神タイガースは、広島東洋カープと開幕カードで対戦した。
開幕戦では、いきなり佐藤輝明が自慢のパワーを活かしてライトスタンドに飛び込む2ランホームランを放って先制。8回には大山悠輔と前川右京の連続タイムリーでリードを広げた。投げ手は、開幕投手を任された村上頌樹が圧巻のピッチングを披露。昨季よりも球速が増した低めに伸びるストレートと多彩な変化球でカープ打線に的を絞らせず、9回途中4安打無失点の熱投でチームを初勝利に導いた。
2戦目は、先発に転向したサウスポー・富田蓮が粘りの投球を見せるものの、試合はシーソーゲームに。6回に森下翔太の2ランホームランで逆転に成功すると石井大智、ゲラ、岩崎優の黄金リレーで逃げ切って連勝。しかし、3戦目はオープン戦で絶好調だった3年目左腕・門別啓人が好投したが、打線はカープの森翔平相手に2安打と沈黙して0-2で敗戦。
なんとか開幕カードは勝ち越したが、3戦合計でわずか7得点と打線が芳しくなく、好スタートとは言えない結果で終わった。
中野、佐藤が不振で打線が繋がらず…中継ぎ陣は期待大
2勝1敗で乗り切ったタイガースだが、気になるのはやはり上位打線のムラだろう。
2番を打つ中野拓夢は3試合ともノーヒットで鋭い打球もなし。3番の佐藤も開幕戦に先制2ランを打った後は11打席連続ノーヒットで7三振を喫するなど、打線の流れを止める要因となった。リードオフマンの近本光司は例年通りのシュアな打撃を見せ、4番に座る森下も勝負強さを発揮しているだけに中野、佐藤が復調してこないことにはチームの浮上はないだろう。
プラス材料としては開幕カードを投げた村上、富田、門別が大崩れしない安定したピッチングをしてくれたことだろう。この3人に加えてドジャース戦で好投した才木浩人、ビーズリー、デュプランティエによる先発ローテーションはリーグ屈指だ。また、ドラフト1位ルーキーの伊原陵人、及川雅貴といった左投げの中継ぎが堂々とした投球で好成績をマークしたことも大きい。
今季のタイガースは、投手力は心配がないだけに打撃がカギになるだろう。
ドラゴンズはエース・髙橋宏斗が打たれて負け越し
3年連続最下位からの巻き返しを図る中日ドラゴンズは横浜DeNAベイスターズと対戦。開幕戦は、昨季に防御率1.38をマークし、最優秀防御率のタイトルに輝いた髙橋宏斗が先発するものの、6回途中4失点で降板。打線も見せ場がないまま0-5で敗れた。
2戦目は、先発を任された技巧派サウスポー・松葉貴大が7回無失点の好投。ストレートは140キロに満たなかったが、内角を突く強気な投球とスライダーが光った。また3番手で新しくストッパーになった松山晋也が登板。危なげなくプロ初セーブを挙げて、シーズン初勝利をマークした。だが3戦目は、メヒアが7回2失点とゲームを作ったが、打線が振るわずに1-2で敗戦。ベイスターズ相手にカード負け越しを喫した。
髙橋はクセが発覚?エースの不調で連勝は厳しいか
開幕3連戦を経て、最も不安なのは絶対的なエース・髙橋のノックアウト劇だろう。150キロを超えるキレのあるストレートと140キロ台のスプリットを織り交ぜた投球はこれまで打ち崩されることが少なかったが、この日は、若手の梶原昂希や森敬斗に自慢のスプリットを痛打されたのだ。セットポジション時に球種のクセが見破られていた可能性もあり、次戦以降のピッチングに大きく響くだろう。髙橋が勝ち星を積み重ねることが難しいようだと連勝は厳しそうだ。
また、ここ数年の課題だった打撃面が改善されていなかったことも深刻な問題だ。その中でも、主軸を打つ細川成也、石川昂弥が0打点と機能せず。ホームランの出にくいバンテリンドームとはいえ、勝負を決めるタイムリーも出ないようでは深刻な事態に陥るかもしれない。
異常事態の貧打で開幕負け越しを喫したカープ
昨季は9月に連敗を重ねて4位に失速した広島東洋カープ。阪神タイガースと開幕3連戦に挑んだ。
開幕戦は、自身初の開幕投手に抜擢された森下暢仁が7回4安打2失点と力投したが、初回に浴びた佐藤のホームランに泣いた。打線もタイガース・村上に歯が立たず0-4で敗退。続く2戦目も、昨季チームトップタイの11勝を挙げたサウスポー・床田寛樹がゲームを作るも、チャンスで追加点を奪えず連敗となった。3戦目は、4年目の森翔平が登板。7回途中まで2安打無失点の快投を見せつけた。森はストレートにキレがあり、タイガース打線から凡打の山を築いた。後続のハーン、栗林良吏も安定した投球で打者を抑えてようやく初勝利。開幕カードを1勝2敗で終えた。
先発投手陣は安定していたが、3戦目までタイムリーなし。打撃面で不安の残る開幕3連戦となった。
プラス要素は、右肘手術を終えて完全復活の栗林
開幕カードを終えて、打撃面のネガティブ要素が目立った。特にモンテロ、ファビアンの両外国人打者からは長打が出ず、変化球に戸惑う場面も多く、ともに打率を残すことも難しそうだ。
その中で朗報もあった。開幕2連敗で迎えた3戦目。昨秋に右肘手術を終えたばかりの栗林が守護神として登板。自慢のフォークを巧みに使ってタイガースの上位打線を3者凡退に抑えたのだ。手術後は復帰時期未定とされてきたが、見事に開幕カードのマウンドに返り咲いた。栗林がいるといないではチーム状況も大きく変わるだけに、数少ない明るい話題となった。