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時代を築く王者と実力が円熟する挑戦者――ジョコビッチとズベレフ、マイアミで交差する物語

マイアミ・オープンで、ジョコビッチがATPマスターズ1000で通算411勝の歴代最多記録を達成。一方、ズベレフはドイツ人選手として史上最多の145勝に到達した。キャリア後期を迎えながら頂点を走り続ける王者と、実力に円熟味を増す挑戦者。異なる立ち位置ながら、テニス界を牽引する2人の軌跡がいま、マイアミで交差している。※トップ画像出典/Pixabay(トップ画像はイメージです)

Icon img 9605 1  1 髙橋菜々 | 2025/04/16

ズベレフ、マスターズ1000でドイツ勢最多勝利を達成!

ドイツ出身のアレクサンダー・ズベレフが、2025年マイアミ・オープンの3回戦を勝ち抜き、ATPマスターズ1000大会での通算145勝目を挙げた。これは1990年にATPツアー制度が創設されて以降、ドイツ人選手として史上最多勝利という快挙だ。また2020年以降に限定したマスターズ1000の勝利数では81勝と単独トップとなり、トップレベルでの継続的な活躍が際立っている。

ズベレフは1997年生まれ、身長198cmのビッグサーバーでありながら、優れたフットワークとプレーの柔軟性を持つオールラウンダーだ。ATPファイナルズでは2018年と2021年に優勝し、東京五輪では男子シングルス金メダルを獲得。ドイツ男子としては史上初の五輪金であり、祖国に輝かしい栄誉をもたらした。彼のテニスの特徴は、鋭いフォアハンドと精度の高いバックハンド、そしてラリーの中で緩急をつける戦術眼にある。2024年のATPファイナルズでは、アルカラスを相手にショートクロスのフォアで切り返し、ネット前に出てボレーで仕留めるプレーも見られた。単に強打するだけでなく、相手を揺さぶる巧さもある。全豪オープン2025ではノバク・ジョコビッチと対戦し、浅いボールに対してはすかさず前に出てスマッシュやドロップボレーで攻める積極性も見せた。そのプレッシャーはまさに「壁」のようで、198cmの体格がネット際で立ちはだかると、相手にとっては逃げ場のない重圧となる。

そんなズベレフだが、まだグランドスラムのタイトルには届いていない。惜しい場面は何度もあり、あと一歩のところで涙を飲んできた。それでも、その実力と実績は誰もが認めるところ。彼が四大大会で初の栄冠を手にする日を、世界中のファンが待ち望んでいる。

“鉄人”ジョコビッチ、歴史を塗り替え続ける王者の現在地

2025年のマイアミ・オープン。テニス界のレジェンド、ノバク・ジョコビッチがまたしても歴史に名を刻んだ。この大会の3回戦で勝利を収めたことにより、ジョコビッチはATPマスターズ1000で通算411勝目を達成。これは、1990年にATPツアーが創設されて以来、同大会カテゴリーでの歴代最多勝利記録となる。さらに、同大会で準決勝に進出したことで、ジョコビッチはATPマスターズ1000における史上最年長準決勝進出者という新たな記録も樹立。37歳にしてなお、世界のトップで戦い続けるその姿に、世界中のファンが称賛の声を送っている。

1987年5月22日、セルビア・ベオグラード生まれのジョコビッチは、長年にわたりテニス界の中心に君臨してきた。「BIG4」と呼ばれるフェデラー、ナダル、マレー、ジョコビッチは、2004年から2022年までの18年間、世界ランキング1位の座を独占し、男子テニスの黄金時代を築いた。以降、グランドスラム通算24勝、ATPファイナルズやマスターズ1000で数々の記録を樹立し、圧倒的な安定感を誇る選手として確固たる地位を築いてきた。特筆すべきはそのバランスのよさ。サービスゲーム、リターンゲームの両方において卓越した能力を発揮し、試合中も冷静さを失わない。まさに“鉄人”という言葉がふさわしい存在だ。

今回のマイアミ・オープンでジョコビッチが優勝していれば、大会歴代単独最多となる7度目の優勝、キャリア通算ツアー100勝目、さらにATPマスターズ1000での通算41度目の優勝という快挙が目前だった。また37歳10カ月での優勝となれば、同大会史上最年長の記録にもなるはずだった。惜しくもその偉業達成は叶わなかったが、なおも最前線で活躍し続ける姿は、若い世代の選手たちにとって大きな刺激となっている。近年はズベレフ、シナー、アルカラスといった新星たちが台頭し、男子テニスは新たな時代に突入しているが、その中でもジョコビッチは“現役のレジェンド”として燦然と輝き続けている。

数々の記録を打ち立ててきたジョコビッチ。2025年もその勢いは止まらず、今後も新たな記録を更新し続け、きっとキャリア終盤を迎えることだろう。いまだ衰えることを知らないその姿は、テニス界のみならずスポーツ界全体の希望とも言える。次なるステージで、どんな歴史を作るのか。ジョコビッチの一挙手一投足から目が離せない。