
“責任を背負う22歳”――鈴木彩艶が語る、日本代表への想いと進化
2025年、史上最速でワールドカップ出場を決めた日本代表。その守護神を務めるのが、22歳の鈴木彩艶(すずきざいおん)だ。『やべっちスタジアム』では、鈴木が海外での生活や代表活動について赤裸々に語った。孤独に打ち勝ちながら成長を続ける若き守護神が、今抱く覚悟と進化への思いとは。※トップ画像出典/Getty Images

「孤独な挑戦」イタリアでの日々
セリエA・パルマで正守護神としての地位を築き、日本代表でもワールドカップ最終予選のゴールを守る鈴木彩艶。22歳にしてその姿は堂々たるものだが、海外での日常は決して華やかではない。静かに、自分と向き合う時間を重ねているようだ。
チームの拠点であるパルマでの生活。朝と昼はクラブで食事が用意されるため、夜は自炊が中心だという。
「親子丼やカレーもそうですし、レシピ見ればなんでもできるので、YouTubeを見ながら作っています」
遠征や練習の合間に、食材の買い出しでミラノに足を運ぶこともあるという。車で1時間半の距離にありながら、鈴木にとってはちょっとした気分転換になっているのだろう。普段は家で静かに過ごすことが多く、時間がある日は作り置きすることもあるそうだ。ベルギー在籍時には日本人選手と集まる機会もあったが、現在所属するイタリアでは「日本人がいないので1人」と孤独な環境に身を置いている。「寂しい」と素直な気持ちを明かしながらも、日本から友人が試合を見に来てくれることが力になると、知られざるプライベートを語った。
さらにハマっているものについて尋ねられると、「コーヒーを淹れることにハマっている」と意外な一面も披露。イタリア文化に深く根付くエスプレッソに魅了されつつも、ドリップコーヒーを恋しく思うときもあるそうで、グラインダーを購入し、自らの手で豆を挽いているという。「まだ始めたばかりなので、自分の好きな豆を見つけていきたいですね」と密かな楽しみを語った。また練習場ではチームメイトやサポーターから「スズ」「ザイオン」と呼ばれ、ときに「めっちゃいいセーブをした時に“アニマーレ”(ビースト:強い動物の意)と呼ばれることがある」と現地での交流についても笑顔で語った。
ピッチの上での姿からは想像できない穏やかさと探究心。その両面を持ち合わせているからこそ、彼のプレーには深みがあるのだろう。
力を抜くことで得た成長
浦和レッズの下部組織で育ち、U-15からU-24まで各世代の代表に選出されてきた鈴木は、川口能活の記録を塗り替え、22歳15日で最終予選におけるGK最年少出場を果たした。現在の日本代表で最も親しいのは、同世代の藤田譲瑠チマ。ベルギーでもクラブが同じだった関係もあり、今でも行動を共にすることが多いそうだ。ほかにも、板倉滉や長友佑都といった経験豊富な選手たちからは、刺激的な話を聞く機会が多いという。
代表での立ち位置については「前に出ていくタイプではないが、やるべきことを見極めて行動するタイプ」と自己分析。クラブと代表、それぞれに求められる役割の違いも強く意識している。
「代表でプレーするのとクラブでプレーするのは重みが本当に違うなと思っていて、失点をしない、結果に繋げることが一番なので、できない時は強く言われることもある。それは代表としての重みだと思うので、これからも責任を持ってプレーしていきたい」と語る。
その“重み”を痛感したのが、AFCアジアカップ2023だった。全5試合にフル出場しながら8失点。自身のミスも絡み、日本は敗退。強烈な批判も浴びた。
「アジアカップで結果につながるプレーができなくてチームとしても敗れてしまった。そこでの経験を活かして今、少しずつ成長できていると思うし、“結果にこだわる”というところは、強く改めて意識するようになったので、それを今後もっと出していきたいなと思う」と振り返る。
特に意識が変わったのは、“力の抜き方”だという。
「アジアカップの時はやろうやろうとしすぎて変に力が入りすぎてしまった。いい意味で力を抜くことを意識すると、少しずつ良くなっている実感がある」と、失敗を糧に確実な成長を遂げていることを明かした。焦りや迷いに支配されていた時期を経て、冷静さを取り戻した鈴木は、いま確かな手応えを掴みつつある。
ゴールを守るために「当たり負けしない身体」を作る
アジア最終予選では、ここまで6試合でわずか2失点。これは日本代表史上最少の失点数である。盤石の守備を支えているのは、最終ラインだけではない。鈴木はFWや前線の選手の守備意識が高く、ボールが自分のところまで飛んでこない試合もあると語る。セットプレーの対応については、「味方の位置だったり、自分のポジショニング。一番はGKがアタックしてプレーを切る、キャッチしきる、ボールを割り切ることができれば一番。フィールドプレーヤーが立っているだけでもキーパー的にはボールを見ながら行くと押されたという感覚がありながらも、実際映像を見てみるとそこまで押されていなかったりとか、判断が難しくなってきていますね」とコメント。冷静かつ戦略的だ。
現在、体重は101kg前後くらい。体格を活かしたフィジカルも彼の武器だ。「強いシュートに手を持っていかれない」「当たり負けしない」と自信をのぞかせた。強烈なシュートにも負けない体作りが、ゴールを守る最後の砦となっている。
鈴木は、3月20日のバーレーン戦を前に「ホームのアドバンテージもあるが、アジアの戦いは何が起こるかわからない」と気を引き締めていた。また「立ち上がりから最後まで集中して、しっかり結果を出したい」と決意を語ってくれた。孤独、挫折、重圧―すべてを乗り越えながら、22歳の守護神は確かに成長を遂げている。これからも彼の進化は、日本代表の未来を照らす力となるだろう。
DAZN『やべっちスタジアム #193 : AFCアジア最終予選SP企画 鈴木彩艶×やべっち対談 後編』より
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