「また笑顔で球場に会うために」ルートインBCリーグ広報 志賀楓氏が語る野球独立リーグの現状
夏には東京オリンピックの開催が予定され、アスリートの華々しい活躍で彩られるはずだった2020年。 新型コロナウイルス感染症の拡大により、野球界はゴールデンウイークを過ぎた今もなお、開幕出来ていない前代未聞の状況が続いている。 その影響はNPBにとどまらず、これまでにNPBに多くの選手を輩出してきた独立リーグにも大きな影を落としている。 経営に関する話題がニュースを賑わせるなか、現場で業務に携わられている方々は、どのような日々を過ごしているのだろうか。 今回は、ルートインBCリーグの広報をされている志賀楓さんに、現状についてお伺いしました。
Thiên nga Junichi
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2020/05/15
©ルートインBCリーグ
ルートインBCリーグ概要
株式会社ジャパン・ベースボール・マーケティングが、東北から関西にかけてのエリアで運営している。2020年は神奈川に新球団が設立され、2リーグ全12球団で、リーグ戦が開催される予定だ。
―現在のご状況は?
志賀:リーグ事務局スタッフはテレワークでの業務対応、選手は自宅待機をしながら、開幕に向けてトレーニングを続けています。
リーグとしても当初から感染対策を徹底してきましたが、自粛要請が強まるにつれて、野球場が閉鎖されるなど、リーグやチームを取り巻く状況は、日に日に厳しくなっていきました。
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―春先から新型コロナウイルスの話題がニュースを賑わせていました。どのような想いで今シーズンの準備をされていらっしゃいましたか?
志賀:3月上旬頃は、距離を空けて客席を設置したり、検温、消毒を徹底するといった対策をして、「絶対に開幕する!」という強い気持ちで準備を取り組んできました。 なので、開幕できない状況がここまで長引くとは、正直想像していませんでしたね。
BCリーグでプレーしているのは、夢に向かってこの1年間に懸けている選手ばかり。選手の皆さんの気持ちを思うと、本当にやるせない部分もありますが、「チャンスはピンチの顔をしてやってくると」という言葉を信じて、開幕に向けて、今も前向きに頑張っています」。
―開幕が延期になった後は、どのようなご状況でしたか?
志賀:緊急事態宣言が出された後は、日に日に状況変わる状況に合わせ、試合のスケジュールを白紙にしては組み直すという繰り返しでした。 現在、6月中頃以降の開幕を予定しています。(※4月30日発表時)
その時の社会状況や感染のリスクを考慮しながら、お客様を入れて試合を行う場合、残念ながら無観客にせざるを得ない場合など、あらゆるケースを想定しながら対応を考えています。
実際に、開幕の延期に伴って、当初思い描いていた経営プランを大幅に変更しなければならない部分もあります。それに加えて、もしも無観客で試合をやる場合には、映像で中継をする撮影機材も必要になります。
購入費用のこと、試合の中継映像をどのように収益化していくかなどについて、長期的な視野も見据えながら、リーグの方針を考えていかなければいけません。
苦しい状況もありますが、幸いにもルートインBCリーグは、「野球で地域を活性化していきたい」という私たちの想いに共感してくださるスポンサー様に支えられてここまで歩んできました。そのような方々と「今、何が出来るのか?」を模索しながら、開幕までの日々を過ごしています。
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―現時点で想定されている、シーズン開幕後の課題はありますか?
志賀:あえて言うなら、過密日程ですかね。 選手の目線で言うと、高校生や大学生よりも多い70〜90試合が行われ、NPBのスカウトに自分の魅力をアピールできるというのがBCリーグの良さ。 その魅力は、今シーズンも最大限残せるようにしていきたいと思っています。
これまでのシーズンは、毎週3〜4試合行われていました。ですが、今シーズンは週5〜6試合に増え、さらにはダブルヘッダーもあり得るかもしれません。
開幕直後は安堵感もあると思いますが、その後は、「もし雨天中止が出た場合はどうするか」といったような、さまざまな問題に直面することになると思います。 それらを乗り越えて、皆さんに楽しんでいただけるようなリーグを運営していきたいと思っています。
-本来の予定であれば開幕戦が行われる予定だった4月11日には、ZOOMを使った村山哲二氏(ルートインBCリーグ代表)、岡田浩人氏(新潟野球ドットコム)のトークショーも開催され、ファンからの質問に答えた。
―初の「ZOOM開幕戦」を振り返ってみて、いかがでしたか?
志賀: ZOOMイベントには、ほぼ全球団のファンに参加して下さいました。12球団のファンが一つの場所に集まることはこれまでになかったので、不思議な感覚がありましたね。
オンラインという形でしたが、久しぶりにお話しできて楽しかったですし、みなさんが開幕を心待ちにしてくれている想いが画面を通して伝わってきました。
ルートインBCリーグの公式アカウントには、「#また笑顔で球場で会おう」というハッシュタグを付けているのですが、まさにこの言葉そのもの。開幕を心待ちにしてくれるファンの皆さんのために、これからも頑張っていきたいと改めて感じました。
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―その後の4月21日には、お笑い芸人のがんばれ!ぶそんくんと共催で、「審判ぶっちゃけナイト」もオンラインで開催されましたね?
志賀: もともとは鎌ヶ谷スタジアムでMCをされていた、がんばれ!ぶそんくんにお声がけをいただいて、実現に至ったイベントです。
2019年にはクラウドファンディングを使って開催した企画でしたが、このような社会状況ということもあって今回はZOOMを使っての実施になりました。
今回は直前に開催が決まりましたが、がんばれ!ぶそんくんにも、「ライブ出来ない状況が続いていて寂しい思いをしていました。楽しみができて嬉しい」と、言っていただきましたし、応援してくださる皆さんの不安な気持ちを、少しでも和らげることができたのならば嬉しいです。
記者会見で抱負を語る杉浦健二郎投手
―この記事をきっかけに関心を持たれた方もいらっしゃると思います。志賀さんが考える、ルートインBCリーグの魅力は何だと思いますか?
志賀:まずは、NPBの選手では感じられないストーリーを抱えた選手が、ルートインBCリーグでプレーしているところですね。
今シーズンから新設された神奈川フューチャードリームスに入団した杉浦健二郎投手は、150キロのストレートが魅力なのですが、野球部出身ではありません。
中学時代は野球部に所属していましたが、高校時代はバトミントン部、在籍していた中央大学でも、NPBの選手を多く輩出してきた野球部ではなく、自身が立ち上げた草野球のチームでプレーしていました。
杉浦投手のように一度は道から外れてしまった選手が、もう一度立ち上がって頑張っている。波乱万丈の人生を歩んできた選手のストーリーに共感し地域で頑張っているヒーローを応援出来るのが魅力だと思います。
あとは、通常のシーズンであれば、ファンと選手の距離が近いところです。こちらはコロナウイルス感染症が収束したら、実際にスタジアムに来てぜひ体感してみてほしいです。
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―選手とファンのふれあいが魅力のルートインBCリーグですが、今シーズンの地域貢献活動やファンの皆さんとの交流は、どのように継続されていくご予定でしょうか?
志賀:コロナウイルス感染症の影響で、もしシーズンが開幕できたとしても、選手とのふれあいの場を設けたり、野球教室などのような従来の地域貢献活動を行うのは、残念ながら難しいかもしれません。 地域の皆さんのために、オンラインで出来る地域貢献活動を考えて、実現させていく必要があると感じています。
―最後に、ファンの皆さんに一言お願いします。
志賀:今は、大変な時期ですけど、まずは感染拡大を防ぐために、出来る対策をする。ウイルス感染を防ぐ生活を皆さんが過ごされているなかで、BCリーグは何が出来るかを考えて取り組んでいきますので、また、笑顔で球場会うために頑張っていきましょう。
ルートインBCリーグ公式サイト