バスケットボール日本代表“吉井裕鷹”「“AKATSUKI JAPAN”の申し子」と呼ばれるまでの努力と道のり
バスケットボール男子日本代表の次世代スター候補に注目し紹介する「NEXT HEROES」が、配信サービス「DAZN」で配信されている。今後の日本代表をけん引していくであろう次世代の選手5人に焦点を当て、独自のプレースタイルや選手としての魅力を全5回にわたって深掘りしていく。#1は、体を張った献身的なプレーで攻守ともにチームへ貢献し“AKATSUKI JAPAN”の申し子と呼ばれる吉井裕鷹をピックアップする。※トップ画像出典/Getty Images
悔しさを乗り越え、代表チームにとってなくてはならない存在に
バスケットボール男子日本代表、通称“AKATSUKI JAPAN”。2021年からトム・ホーバス氏がヘッドコーチ(HC)となり、チームの目指すバスケットを体現するのに欠かせない存在となったのが吉井選手だ。ホーバスHCは吉井について「年齢はまだ若いが、経験豊富で大切な選手」と話す。
前シーズンまで所属していたアルバルク東京では、帰化選手やアジア特別枠の選手とポジション争いをしなくてはならず、公式戦での出場機会にはあまり恵まれていなかった。通常、日本代表チームのメンバー選出は、国内リーグでの活躍や実績を基に決められることが多い。バスケットボールコメンテーターの井口基史氏は「出場時間をもらうことさえできれば結果を出せるということを代表チームで証明した、数少ない選手の一人。悔しい思いをしてきたが、大きく花開いた」と語る。
吉井が語る自身のストロングポイントは「フィジカルにバスケットをする。ボックスアウト、体をぶつける、リバウンド、ディナイなど基本的なことをしっかりやること」だという。チームの一員として献身的に、徹底的にやるべきことをする。それこそ吉井選手が“AKATSUKI JAPAN”の申し子と呼ばれる由縁なのだろう。
ディフェンスのスペシャリストとしての期待に応える活躍
身長196cmの吉井は、国内リーグで外国籍選手とマッチアップすることも多い。日本代表チームへの招集もディフェンダーとしての能力を買われ、パリ五輪では相手チームのエース級選手のマークを任された。
フィンランド代表のラウリ・マルカネンとのマッチアップでは気迫あふれるプレーで、チームに活力を与える存在となった。
井口氏は、吉井のディフェンスの良いところを「チームのために必要なときにファウルを使うIQとフィジカル、両方を持っていること」だと話す。チームのために自分のファウル数を捧げることもいとわない、その貢献度の高さは、ブースターからも“仕事人”と認められるほどだ。吉井は「マッチアップする選手がやりたいプレーをやらせないこと。映像を何度も観て特徴を捉えきれたら、誰でも大丈夫だと思います」とディフェンスのスペシャリストとしての自信をのぞかせた。
出場時間が増えたことでスコアラーとしての能力が開花する
経験も積み重ねたことにより、ディフェンダーとしての能力は誰もが認めるものになったが、それ以上にスコアラーとしての能力が開花したことはうれしい誤算だった。吉井のパリ五輪での出場時間は、1試合平均30分。これは代表チームの渡邊雄太、ジョシュ・ホーキンソンに次いで3番目に長い。今シーズンは三遠ネオフェニックスへ移籍し、平均出場時間はキャリアハイの25.5分。1試合の平均得点は12.4点、3ポイントシュートの成功率は52.8%と2本打てば1本以上入るという高確率だ。
井口氏は「25分以上の出場時間があれば2桁得点が可能だとホーバスHCも考えていると思う」と語り、吉井のことを「この1年で最も成長した選手」と評価した。実際に昨年2月の中国戦では無得点に終わったが、11月のモンゴル戦では10得点、グアム戦では17得点という結果を残している。吉井自身も「所属チームで試合に出られていることで、シュートの感覚をつかめていることが大きい」と話している。
自分が体現してきた代表チームのバスケットを伝える立場に
ホーバスHCのバスケットスタイルを誰よりも体現している吉井。代表チームが目指す速いバスケット、シュートを打てる場面ではためらわずに打つこと、ディフェンスのシステムなど、自分が経験してきたことを新しく代表チームに入ってくる選手に伝えるのも自分の役目だと言う。
自身の努力で道を切り開き、“AKATSUKI JAPAN”の申し子と呼ばれるまでに成長した吉井。「僕は僕以上をできないので、自分を貫き通すしかない」と、冷静で芯のある言葉が印象的だった。中心選手となるであろう、2027年カタールワールドカップへ向けての活躍にも期待したい。
『DAZN』NEXT HEROES
タイトル: #1 吉井裕鷹 ~"AKATSUKI JAPAN"の申し子~
配信日:2024年12月9日(月)
内容:日本で開催されたFIBAワールドカップとパリ五輪を経て、日本代表は新たな挑戦、2027年カタールワールドカップへの旅路をスタート。渡邊雄太、富樫勇樹、比江島慎らが両大会で築き上げた道を引き継ぐ、注目の新世代ヒーローたちを紹介する
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