Bl 1  311

「ブルーロック」世界一のストライカーを目指すFWたちがサッカー人生を賭ける“青い監獄”

2026W杯に向け、アジア最終予選も進んでいる。今、アツいサッカー作品といえばやはり「ブルーロック」ではないだろうか。「世界一のストライカーは世界一のエゴイスト」。そんなキーワードを掲げ、型破りなサッカー漫画として話題を集める「ブルーロック」(原作:金城宗幸/漫画:ノ村優介)。TVアニメは2022年10月からスタートし、2クール(約半年)にわたって放送された。また2024年10月現在、TVアニメ2期となる「ブルーロック VS.U-20 JAPAN」も放送中と、勢いも衰えを知らない。今回は「ブルーロック」TVアニメ1期を取り上げ、なぜここまで“ハマる”人が続出したのかを掘り下げたい。メイン画像:提供/(C)金城宗幸・ノ村優介・講談社/「ブルーロック」製作委員会

Icon 20190710 dscf0362 middle 藤堂真衣 | 2024/12/02

「世界一のストライカー」を生み出す一大プロジェクト“青い監獄”(ブルーロック)

Thumb 2ndkeyvisual v04
提供/(C)金城宗幸・ノ村優介・講談社/「ブルーロック」製作委員会
主人公の潔世一(いさぎよいち)は無名の高校生サッカー部員。ポジションはもちろんFWだ。

物語は彼の所属する一難高校の全国大会出場がかかった試合から幕を開ける。ボールを保持している潔に、マークのついていないチームメートが「こっち、どフリー!」と声をかける。「ワンフォーオール、オールフォーワン(一人はみんなのために、みんなは一人のために)」。監督の口癖が潔の耳にも届き、潔はチームメートへパスを出す。確実な得点、そしてチームの勝利のために。

パスを受けたチームメートが放ったシュートはわずかにコントロールを失い、ボールはゴールポストに弾かれる。こぼれ球は相手チームへとわたり、カウンターからのシュートを受けて一難高校は敗北する。

Thumb bl 1  60
提供/(C)金城宗幸・ノ村優介・講談社/「ブルーロック」製作委員会
高校サッカーとしては美しい敗北かもしれない。だが敗北は敗北だ。「勝ちたかった……」、失意のままに帰宅した潔に日本フットボール連合から強化指定選手に選出されたという知らせが届く。

集合場所に現れたのは、絵心甚八(えごじんぱち)と名乗る一人の男。彼は日本のW杯優勝の仕掛け人として、日本サッカーに欠けている「革命的なストライカー」を生み出すための実験として「青い監獄(ブルーロック)」プロジェクトを立ち上げると宣言する。

“青い監獄”招集から三次選考までを描くアニメ1期


Thumb bl 1  102
提供/(C)金城宗幸・ノ村優介・講談社/「ブルーロック」製作委員会
“青い監獄”では各参加者が入所時のランキング順に11人ずつの部屋に分かれて共同生活を送り、トレーニングや試合形式の選考などを経て選別されていく。潔は現状でランキング最下位の「チームZ」に配属されることになる。

入所早々に行われたボールでのオニごっこが印象的だったという読者もいるかもしれない。ペナルティエリア=FWの“仕事場所”と同じサイズのスペースでいかに活躍できるか、その精神があるかを試す時間だったというものだが、ここで脱落したのは全国クラスのストライカー。“青い監獄”が求めるのは、非常識なまでの「エゴ」。自分が決める、最後の一瞬までそのチャンスを諦めない……。その姿勢こそがストライカーの資質であるとして、現状の技術が必ずしも“青い監獄”での実力や序列には紐づかないという示唆でもある。

Thumb bl 02 56
提供/(C)金城宗幸・ノ村優介・講談社/「ブルーロック」製作委員会
一次選考では部屋ごとのサバイバルマッチが行われることになるが、全員がFWとしてサッカーに取り組んできたチームではポジション取りもままならない。「俺が」「自分が」とスタンドプレーが目立ち「サッカー」とは程遠いプレーになったチームZの前に、司令塔となる選手やエース選手の存在を軸にしてまとまり始める相手チームの姿を見せられ、潔はサッカーというスポーツが生まれる瞬間を肌で感じることになる。

一次選考ではチームZのメンバーや相手チームのキャラクターの個性が次々と描かれ始める。チームZにはトリッキーなドリブルを得意とする蜂楽(ばちら)やフィジカルに強みをもつ國神など、いずれも癖のあるキャラクターがそろう。また、強敵であるチームVに所属する凪誠士郎の存在にも注目だ。潔とはタイプの違う選手でありながら、お互いに「底が知れない相手」として意識しあう場面もある。

Thumb bl 02 57
提供/(C)金城宗幸・ノ村優介・講談社/「ブルーロック」製作委員会
二次選考ではその凪とともに3on3での試合が行われる。勝利チームは相手から一人欲しいメンバーを引き抜き、次は4対4での試合を行い、さらにメンバーを増やして5人チームを作るのが通過条件。

ここで登場するのが、高校生ストライカー最強といわれる糸師凛だ。天才MFといわれる兄・糸師冴への敵対心を原動力にする凛だが、その実力はブルーロックランキング1位。卓越した実力を見せつけられ、さらなる進化を求められることになる。

エゴとエゴのぶつかり合いが、潔たちをさらなる高みへと押し上げていく

Thumb bl 08 29
提供/(C)金城宗幸・ノ村優介・講談社/「ブルーロック」製作委員会
サッカーは11人でやるスポーツ。チーム精神、絆、思いやり。日本人の美徳でもある組織力を武器にサッカーをしてきた日本代表も、世界の壁に阻まれてきたのは現実世界でも否定できないだろう。

「絆を大事に」「仲間のために」、そんな耳ざわりのよい言葉を絵心は切り捨てる。「サッカーは相手より多く点を取るスポーツだ」。そのためにたった一人の最高のエゴイストを育てる環境が“青い監獄”だ。

Thumb  bl 12 23
提供/(C)金城宗幸・ノ村優介・講談社/「ブルーロック」製作委員会
“たった一人”になれなかった者は未来永劫、日本代表になれる資格を失う。参加する300人のストライカーたちは、己の未来を賭けることになる。そんな容赦のない「デスゲーム」的な要素も、「ブルーロック」が従来のスポーツ作品と異なるポイントだろう。“青い監獄”で過ごす選手たちは互いにチームメートであり、絶対に負けてはいけない敵でもある。

潔はストーリーの序盤ではこれといったスキルのない選手として描かれる。卓越したドリブルセンスもフィジカルの強さも、決定力もない。そんな自分に扱える武器を試合のなかで探し、磨き上げていく。そのヒントはともに戦うチームZのメンバーであったり、敵わないと感じた敵チームの誰かであったりする。エゴイストを育てるのはさらなるエゴイストたちの存在。たった一人でプレーしているように見えても、彼らを育てるのはそこにいる誰かだ。そこに「ブルーロック」の面白さが凝縮されているようにも思えてならない。