リングの上と日常の狭間で―“松谷綺”が描く理想と現実
リングで光を浴びる入場シーン、観客からの歓声、そして勝利の瞬間。Krush王者・松谷 綺にとって、試合に向けた努力が報われるその瞬間こそが、至福のひとときだという。華やかな舞台の裏で、大学とジムを行き来するストイックな日々を送りながら、仲間と切磋琢磨し、次なる目標であるK-1のベルトを目指す彼女。普段は自己肯定感の低さに悩むこともあるが、リングの上では「絶対に負けない自分」を貫く。その裏にある努力と、未来への挑戦とは?※トップ画像撮影/松川李香(ヒゲ企画)

勝利の瞬間、努力が報われる至福のひととき
©K-1
――個人的に格闘家の入場シーンが好きなのですが、あの瞬間ってどんな気持ちで立っているんですか?
入場シーンは確かに一番華やかな瞬間ですよね。でも、意外と無心で「何も考えていない」ことが多いんです。ただ、入場中に「わーっ!」と声をかけてくれる方がいると、それがすごく嬉しいんです。「注目されているんだな」って実感すると、本当に励みになります。でも基本的には、「さあ、やるぞ!」って試合に集中している感じですね。
――格闘家として、一番「最高だな」と思える瞬間は?
やっぱり勝った瞬間ですね!試合の1ヶ月以上前からきつい追い込み練習を毎日やって、その努力が報われるのが勝利の瞬間なんです。試合は短いけど、勝つか負けるかでその後の気持ちは全然違います。勝った後にみんなから「おめでとう!」って言われると、「頑張ってよかった」と心の底から思えるんです。
撮影/松川李香(ヒゲ企画)
――勝利後のご褒美は何かありますか?
試合後は旅行に行くことが多いですね。この前は、試合で初めてKO勝ちができて、しかも怪我が全然なかったので、すぐ練習を再開しました。でも、その前の試合では怪我をしたので、旅行に行ってリフレッシュしたり、美味しいものを食べたりして過ごしました。
私、食べることが好きなので、試合後はとにかく美味しいものを食べまくります。特に焼肉が定番で、計量が終わった日も、試合の前日も、勝った後も焼肉(笑)。「これを食べたらやるぞ!」って気持ちになれる私のルーティーンなんです。
「まだ50%の自分だからこそ、未来は広がっている」
――普段からストイックな生活をされているイメージがありますが、練習とそれ以外の時間のバランスはどんな感じですか?
平日は朝から大学に行って、その後すぐジムに直行というスケジュールですね。授業は9時から始まるんですけど、1限と2限だけ受けて、午後の15時から練習がスタートします。ほぼ毎日そんなルーティンで動いていて、完全オフは日曜日だけ。忙しいですが、慣れたらこれが普通になりました。
撮影/松川李香(ヒゲ企画)
――かなりハードですね。そんな日々の中で、モチベーションの維持はどうされていますか?
試合が終わって次の試合が決まるまでの間は、正直迷うこともありますね。相手が決まらないと具体的な対策ができないので、何を目標にしていいかわからなくなることもあります。でも、ジムには同年代の仲間が多いので、技術を教え合ったり、新しい技を試したりして、次の試合で使えそうなものを一緒に磨く時間がモチベーション維持に繋がっています。一人じゃない環境が本当にありがたいですね。
――Krush王者としてK-1のチャンピオンを目指している中、今のご自身を理想の100とした場合、何パーセントくらいだと思いますか?
今の段階だと、まだ50%くらいだと思います。技術面でももっと伸びしろがあるし、Krushのベルトは取れましたけど、K-1のベルトはまだ手にしていません。一度チャンスを逃してしまった悔しさもあるので、現状はまだ折り返し地点という感覚です。
――残りの50%を埋めるために、どんなアプローチを考えていますか?
前回の試合で初めてKO勝利ができたんですが、それまでは判定勝利が多く、ダウンを奪えても倒しきれない試合が続いていました。これからは、もっとKOで試合を終わらせる力をつけたいと思っています。そのために、打撃の精度やパワーをさらに磨き、「倒しきる」試合を増やしていくことが今の課題ですね。
「普段は自信を持てないけど、試合の時はブレない自分になる」
――KOに必要なのはフィジカル面の強化ということですか?
フィジカルはもちろん重要ですね。ただ、重いものを持つ筋トレだけじゃなく、全身を効率よく動かす「連動性」を高めるトレーニングに力を入れています。そのおかげでスピードも上がって、打撃のパワーもどんどん強くなっている実感があります。この前の試合では、その成果がようやく形になったと思います。
これからは、さらに「一撃で倒す力」、いわば打撃の“殺傷能力”をもっと高めたいですね。フィジカルと連動性を強化しながら、効率よく相手を倒せるスタイルを追求していきたいです。
撮影/松川李香(ヒゲ企画)
――アスリートの方は「自信が大事」とよくおっしゃいますが、その点についてはどうお考えですか?
本当にその通りだなと思います。でも、私自身、自信を持つことって得意じゃなくて。格闘技だけじゃなく、日常の中でも「これでいいのかな」「できるかな」って悩むことが多かったんです。今でも自己肯定感が低い部分があると感じています。
でも、試合の時だけはネガティブな気持ちは捨てるようにしています。試合前には「絶対勝てる」とか、自分に言い聞かせるんです。「言霊」って言葉があるように、そういうポジティブな言葉が本当に力になるんですよね。
それに、周りの応援や励ましの言葉も自分の中で大きな支えになっていて、それで「やってやろう!」って気持ちになれるんです。だから今、自信を持つことが自分にとってすごく大事なテーマになっています。
――試合の時はその自信を持って挑むんですね。
そうですね。リングに上がる時は、ちゃんと気持ちを切り替えてブレない自分で挑んでいます。普段は自信を持てないこともありますが、試合の時だけは絶対に負けない気持ちで立つ。それが自分の戦う姿勢だと思っています。
松谷 綺(まつたに・きら)
2003年6月1日生まれ、東京都練馬区出身。ALONZA ABLAZE所属。身長152cm、体重45.0kg。ファイトスタイルはオーソドックス。入場曲は、ゆうちゃみの『あなたに捧げる応援歌』。空手をバックボーンとし、様々なアマチュア大会で優勝を重ね、2019年6月にプロデビュー。2021年に卜部功也が代表を務める「ALONZA ABLAZE」所属となり、同年10月にKrush初参戦を果たし、森川侑凜からダウンを奪って勝利。翌22年2月は豊嶋里美を下し、6月にK-1初の女子大会「K-1 RING OF VENUS」の初代K-1女子アトム級王座決定トーナメントにエントリーするも、準決勝で菅原美優に敗れて、プロ初黒星を喫した。同年11月のKrushで優に勝利して再起を果たすと、23年4月Krush初の女子大会「Krush~RING OF VENUS~」でも連勝。同年7月のK-1では元K-1女子アトム級王者パヤーフォン・SWタワンを撃破し、11月には第4代Krush女子アトム級王者となる。2025年2月「K-1 WORLD MAX 2025~K-1女子アトム級王座決定トーナメント~」に出場が決定。再びK-1のベルトを賭けた戦いが始まる。現在の戦績は14戦 11勝(1KO) 1敗 2分。
Hair&make:Asuka Izawa (PUENTE.Inc)
Photo:Rika Matsukawa

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