
「金メダルをとれる人に絶対なりたい」ー夢を追いかける少女とコーチの物語『メダリスト』
秋からスタートしたフィギュアスケートシーズンも、グランプリシリーズや全日本選手権を経て、2月に控える四大陸選手権に世界選手権……と、次々と多くの大会が開催され、まさに佳境といったところだろう。今回取り上げるのは、フィギュアスケートを題材とした「メダリスト」(作:つるまいかだ)だ。選手とコーチにフォーカスした構成で注目され、2025年1月からTVアニメも放送されている話題作の魅力について考えたい。※トップ画像/筆者撮影

アイスダンス出身のコーチと“出遅れ”選手の物語
「メダリスト」は2021年から月刊アフタヌーンで連載がスタートした漫画作品。TVアニメ化にあたっては、元・五輪代表で現在はプロフィギュアスケーターとしても活躍する鈴木明子氏が振り付けを担当するなど、その力の入りようでも注目されている。作品の舞台はフィギュアスケートのトップ選手を多数輩出している愛知県・名古屋市が中心となる。
フィギュアスケートの世界では、日本は強豪国のひとつであり、選手層も非常に厚く、トップを目指すような選手はほとんどが就学前からスケートを始めている。中学生のときにテレビで偶然見たフィギュアスケートに衝撃を受け、以来独学でシングル選手を目指してきた明浦路(あけうらじ)司は、その“出遅れ”のために20歳までコーチによる指導を受けることができず、アイスダンスへの転向を条件にコーチに師事し、全日本選手権への出場経験も得ることができたものの、現役を退いてからもショー出演などとは縁がなく、無職のまま26歳を迎える。
そんな司がとあるリンクで偶然出会うのが、もう一人の主人公である結束(ゆいつか)いのりだ。フィギュアスケートをしていた姉の姿を見て育ち、自身もスケートに憧れていたものの、姉のケガやいのり自身の特性から母に反対され、母に隠れて一人リンクに通い、小学5年生の現在も独学でスケートを学んでいる。学校では勉強も苦手で忘れ物やミスが多く、クラスメートからも遠巻きにされている姿も描かれる。
小学5年生は、フィギュアスケートを始めるには遅いといわれる年齢だ。いのりの母は「今からできることがあるし、この子には向かないと思う」と反対するも、リンクに乗ったいのりの姿を見て司は「才能がある」と確信し、彼女のコーチになることを申し出る。
夢を二度諦めた青年と、氷の上でこそ輝ける少女が金メダルを目指す物語は、こうして始まった。
選手として急成長するいのりと、その成長を導き支える司の師弟関係
いのりはあまり目立つタイプでなく、学校でも自分の殻に閉じこもっている児童として認識されているが、リンクの上では別人のように笑顔を咲かせ、堂々とふるまうことができる。それだけいのりはリンクに焦がれ、執念を抱いてきたのだ。
同じ中部ブロックには、同世代で「天才」と呼ばれる狼嵜(かみさき)光がいる。初出場の全日本ノービス選手権で優勝を果たし、将来を嘱望される彼女と知り合うことで、いのりの「スケートをしたい」という夢は少しずつ「勝ちたい」「メダリストになりたい」へと変わっていく。
物語の序盤に印象的なシーンがある。初めて出場する大会でいのりは「優勝」を目標に掲げ、そのために新たに2回転ジャンプをとり入れるか、現在できているプログラムの完成度を高めるかの選択を迫られる。
「間違えたくない」という思いが強いいのりは、正解をコーチである司に求めようとするが、司は「俺の意思を読み取ろうとしてはいけない」と諭す。「あなたは自分の人生を懸けている。自分の判断を軽んじてはいけない」とも。それでも、もし選択を誤ったら…。不安がいのりの心を支配するが、司は最後に「どっちを選んでも俺は必ず優勝へ導くから」と断言する。
いつも何かを間違えてしまい、忘れてしまい、人から責められあきれられる経験をしてきたいのりにとって、どれほど大きな救いになっただろうか。
さらにいのりは「きれいに踊れる選手になりたい」と司に伝え、プログラムの完成度を優先する選択をする。それはアイスダンス出身の司の実力を知っていて、「先生のようになりたい」と願っていたからにほかならない。
師が自分の知や技を惜しみなく弟子に分け与え、その成長を自分の喜びとする。理想ともいえる師弟関係がそこに完成しているように感じられる。
ルール解説も詳細!フィギュアスケートの魅力を知れる作品
いのりはジャンプやステップといった多くの技を爆発的なスピードで身につけ、フィギュアスケートのいち選手として大きく成長していく。地元開催の「名港杯」に始まり、ブロック大会にも名を連ねるようになるが、強豪国の日本では、地方にも全国・世界レベルの選手がひしめく。彼女たちもまた己の人生を懸け、氷の上で戦っている。
高難度のジャンプや完成度の高い構成、高い表現力。それぞれの武器を手に氷上を舞う選手たちの姿は、作中でも特に美しく描かれている。
ジャンプはどのような軌道を描くのか、ステップシークエンスの美しさとはどのようなものなのか。実際の演技は流れるように進み、ジャンプは一瞬なために見逃してしまったり、目で追えなかったりことも多い。選手たちの動きをしっかりと描き出してもらえるのは、漫画の特権かもしれない。
また、ルールについて適宜解説がなされている点にも言及したい。ジャンプの種類別の基礎点やGOE、どうすればスコアが上がるのか…など、初心者にもわかりやすい説明があるため、大会でのスコア争いを見守る側もついつい力が入る。
数えきれない対価を支払うことになったとしても、目指したい夢に出会ったいのりと、その夢をともに目指す覚悟を決めた司。コーチと選手の深い絆を感じながら、フィギュアスケートという「熱い」スポーツに触れられる良作だ。

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